夕食はここに来る道中で買った材料で作った夏野菜カレーとお惣菜のサラダだった。
豹牙さんの「冴妃の作ったサラダの方が美味い」という発言のせいで少々場が荒れたが、まぁ許容範囲内だ。
「冴妃、こっち」
「はい」
そしてその後、豹牙さんに誘われ再び部屋を訪れた。
クーラーを昼間からつけっぱなしにしていたので、夜になると少し肌寒い。
そんな部屋を素通りし、ベランダへ来るよう手招きされる。
室内のカラッとした空気から一変、外に出た途端、湿気に身を包まれた。
「ほら、見てみろ」
豹牙さんの隣に立ち、指された方向に焦点を合わせた。
夜の空には満月が独り、煌びやかに輝いている。
照らされた海面には光の道が通っており、このまま月の元まで駆けていけそうだ。
思わず息を呑みそうな光景。
だというのに私の心は酷く凪いでいた。