あ。豹牙さんの前髪、乱れてる。

そう思うより先に前髪に触れていた。


「・・・何のつもりだ」

「前髪が乱れていたので、つい」


怪訝な顔をしているが手を(はた)かれなかったので嫌ではなかったらしい。

そのことに安堵していると互いの視線が交わった。


夜空色の瞳が撫でなくていいのか、と細められる。

いいんですか?と首を傾げ応えると、好きにすればと目を閉じられた。


ならば遠慮なく。

豹牙さんの艶のいい黒髪をさらりと撫でた。

髪質は思っていたよりも硬く、束感がある。それを解すようにゆるゆると手を動かした。


「私、豹牙さんにこうされると癒されるんです」

「へぇ・・・。案外こっち側も悪くないな」



豹牙さんが私の肩に頭を預けた。