「どうされました?」

「このA案とB案、どっちがいいと思う?」

「えっ私が見てもいいんですか?」


肯定するようにん、とパソコンの画面を向けられた。

豹牙さんは今まで仕事の内容を私に教えたことがない。
企業秘密だから私が訊かなかったのもあるが、こんなこと初めてだ。


豹牙さんが目を丸くする私を試すように見やる。


「将来俺の秘書になるとか息巻いてんだろ。これはその予行練習な」

「なるほど。そういうことでしたら拝見させていただきます」


と意気込んだはいいものの、何が書いてあるのかちんぷんかんぷんだ。

そもそも私は前提条件すら知らされていないのでどちらがいいかなど分かるわけがない。


「あの、まずはこの単語の意味なんですが──」


だから分からないところをひとつずつ尋ねていき、知識を蓄えていく。

豹牙さんは質問すれば基本的に何でも答えてくれるのだ。