暑いし汗かくし日焼けするし、泳いだ後も海水で身体中が痒くなるしシャワーは荷物に砂が入らないように気をつけないといけない。

そうまでして海に入りたい欲が私にはないのだ。

あぁ、でも母親は好きだったな。夏の旅行では必ず海で泳がされていた。

・・・忘れよう。今年はそんなこととは無縁の夏を送れるのだから。


クーラーのきいた部屋で気の赴くままに本を読んだりストレッチをしたりして、眠くなったらそのまま寝る。

これが自由で怠惰な最高の夏休みだと思う。


今日何度目かの眠りから覚めると、豹牙さんと目が合った。

また寝てたのか、と呆れた眼差しを向けられたが気にしない。

豹牙さんも豹牙さんでそこまで関心はなく、視線は再びパソコンへと向けられた。


裕次郎さん一家所有のコテージにやってきてからというもの、豹牙さんは淡々と仕事をこなしている。

カタカタタンタンと奏でられるキーボード音が心地いい。

その音に聴き入りながら端正な横顔をぼんやりと眺めた。