「豹牙さんの言い方に引っかかりました。何故"俺らの"や"【黎明】の"ではなく"お前らの"と言ったんですか?」

「やっぱり冴妃は気づくのか」



あ、豹牙さん嬉しそう。


ほんのわすか、本当に本当に目を凝らさないと分からないぐらいだけど、豹牙さんの口角が上がったのが分かった。


「アレはあくまで構成員向けの姫だからそういう言い回しをした。変な勘違いされると面倒臭いからな」

「なるほど」


自身が連れてきた女の子をアレ呼ばわりは如何なものか。

それでも然るべきときにはちゃんとした言葉遣いが出来るので指摘しないでおく。

そもそも私が注意したところで豹牙さんの口の悪さは治らない。


困った人だ。
でも、この方こそ私が仕える総長様だ。


豹牙さんは私の髪の毛をさらりと撫で、端正な唇を動かした。