見ると、背もたれの後ろから浬が顔を覗かせていた。


「・・・・・・浬」

「ん?」

「・・・実家、帰りたくないです」


ここの人たちは当人が話さない限り、過去の詮索をしてこない。だから何気なく本音を零せる。

今だって浬はいつもの飄々とした態度のままだ。


「え、なら帰らなくていいじゃん」

「そういうわけにはいかな──」

「今年からお盆は勉強合宿するって豹牙が計画してたし」

「っはい?」


浬の発言に驚き、ガバッと起き上がった。

勉強合宿? 何の話ですか。


「あれ聞いてなかった?・・・あー、そういえば冴妃にはサプライズとか言ってたような・・・?」


というかそれを私にバラしたらダメでしょう。豹牙さんに後で怒られ・・・あ。手遅れだ。


「おい」