まぁ賢人のことは頭の隅においやって、今はこの至福の時間を堪能しよう。


私の頭をひとしきり撫でた後で、豹牙さんが静かに尋ねてきた。



「さっきの件、どう思った?」

「あやなのことですか?」

「そうだ」



正直めちゃくちゃ驚いた。


姫問題に対してあれだけ無関心を突き通していた豹牙さんが、
女子と関わるのダルいからって私に遠ざけるよう指示してきたあの豹牙さんが、
構成員のためにわざわざ女の子を連れてきたのだから。


しかも髪を下ろして眼鏡を外したら美少女に変身する原石タイプの女の子を自ら選んで。


だからって「豹牙さんの好みですか?」だなんて馬鹿馬鹿しいことは訊かない。

もし豹牙さんの好みの女の子だとしたら、わざわざあんな"違和感のある"紹介をしないから。

堂々と「俺の女」とでも言うはず。


豹牙さんはそういう人だ。


それを踏まえて慎重に言葉を紡ぐ。