「お前、それを男が見たらどう思うか考えたことあるのか」
「・・・?『わー肩だー』とかですか?デコルテって単語知らなさそうですし」
豹牙さんの質問の意図が掴めず思ったままのことを答えると、より怪訝な顔をされた。
「正気か」
「正気です」
そう言い切ると、豹牙さんは「まじで分かってないんだな・・・」と独りごちた。
その目が獲物を前にした黒豹のように煌めいたとき、本能的に身体が一歩後退した。
とん、と壁にぶつかる。
私たちの隙間を埋めるように、豹牙さんは壁に手をつき、私の首元に顔を寄せた。
「よく覚えとけよ、冴妃。男はイイ女の肩を見たらこうやって──」
私の肩にかかってる上着をずらし、そこにキスを落とす。
「自分のものって跡つけたくなるんだよ」
チクっと痛みを感じたのと、上着が地面に落ちたのはほとんど同時だった。
「分かったか」
「・・・・・・はい」
そう答えた声はかすれていて今にも消えてしまいそうだった。