母親からの連絡はあの日以降頻繁にやって来た。

ドレス以外にも装飾品はどれがいいか、美容院は予約しておこうか、など準備に必要な事項を全てこと細やかに訊いてくるものだから精神的にとても疲れた。


やり取りを通して数十年間に渡り両親が創り上げた『一条冴妃』を完成させていくのには慣れているけれど、疲れるか疲れないかは別の話なのだ。


これらのやり取りの末、母親の好み(正確には母親の理想的な『一条冴妃』の好み)が凝縮されたパーティドレス一式が送られてきたが、それは開封することなくクローゼットの一番奥に閉まった。

数十万円もするものを一度も着ないことに多少の罪悪感はあれど、着たくないものは着たくないので仕方ない。