部屋を出る直前の「じゃあまた明日な」という言葉を抱きしめたまま。






お風呂から上がり、髪を雑に乾かしながらスマートフォンを眺める。

液晶画面に表示されているのは数時間前に母親から送られてきた数枚の写真と「どのドレスがいい?」というメッセージ。

どこからか創立記念パーティのことを聞きつけたのだろう。

それだけならまだよかった。


面倒なのは送られてきた写真の中からパーティ用のドレスを選ばなければならないこと。


正直どれも好みではないので違うのにしてもらいたいが、それを言ったところで「でも冴妃ちゃんにはこっちの方が似合うと思う」の一点張りで最終的に私の意見なんてなかったかのように母親の望み通りの品が買われることは経験済みなので、黙っておく。


その代わりに母親の望む『一条冴妃』の模範解答を打ち込んだ。

時間にすれば5分にも満たないが、【堕天】との抗争よりもどっと疲れた。