これ以上見つめては危険だ。
ただでさえ豹牙さんには弱いのに、更に弱くなったら・・・────。
「ほら、お前は姫なんだからもっと俺を癒せ」
「いいえ違います。私はただの幹部です」
頭で理解するよりも先に、否定の言葉が口をついてでた。
うっかり雰囲気に呑まれそうになったが、今ので頭が完全に冷え、正気を取り戻した。
「私は貴方の心の拠り所になってもいいと言いましたが、姫になるなんて一言も言ってません」
「でも内容自体は変わらないだろ」
「それはそうですが、私は幹部でいたいんです。理由はもうご存知ですよね?」
──私は豹牙さんに守られたいんじゃなくて、一番近くで支えたいんです。
さっきの豹牙さんと同じ言い回しをしたからか、豹牙さんは少しきょとんとした顔をした後、口を緩めて「そうだな」と笑った。
あ、豹牙さん嬉しそう・・・。
その表情がいつもと違って年相応に見えて、つい可愛いと思ってしまった。