だからといって豹牙さんの隣を譲るつもりはないが。


私はあやなが豹牙さんと付き合いたいのと私が豹牙さんの隣にいたいのは別の話と考えている。

例えるならそれぞれ違う畑を耕しているようなものだが、あやなは私と同じ土俵にいるつもりらしい。

だから嫉妬して私を2人の恋を邪魔する障害物みたいに言ったのでしょう。


・・・ああでも、もし2人が付き合ったら豹牙さんの心の拠り所は私じゃなくなるのか。

そう考えると心にぽっかりと穴が空いたような、寂しい感じがした。

それに豹牙さんにキスされることも・・・──。



「そんなに見つめてどうした」



えっ、と声が漏れた。

どうやら物思いにふけっている間豹牙さんの唇を見つめていたらしい。それを自覚した途端、頬に熱を帯びた。

豹牙さんは何を考えていたのかと興味深そうに目を細めている。


「・・・今日、姫に私が豹牙さんを独占していると言われたもので、それを思い出してました」


嘘は言ってない。


「何だそれ。お前それを真に受けたのか」

「まさか」