カーテンの隙間からチラつく光に起こされ、近くにあった置き時計を手に取った。

現在の時刻は11時10分。ちょうど三限目が始まった頃だろう。

昨日遅くまで資料を作っていたせいでついつい寝過ごしてしまった。

補講期間の今は四限までしか授業がないから、今から朝食とってストレッチして行ったらちょうど下校中の部下に会える。

ここ最近学校を留守にしていたのでたまには行ってみようと思い、ベッドから降りた。



豹牙さんがほとんど学校に行かないように、実は私も豹牙さんほどではないが学校に行っていない。

勉強は教科書読めばだいたい分かるし、分からなくても豹牙さんか裕次郎さんに訊けば解決するから。


他の幹部も似たような感じで、真面目に通っているのは【黎明】にも【堕天】にも属していない一般の生徒ぐらいだ。


あぁでもあやなとその友達も通ってはいるのか。
あと私の指示で情報収集している部下と留年寸前の奴らも。

授業に出席せずともテストで結果さえ残せば進級できるのが私立京極学園の強みだが、裏を返せばいくら真面目に取り組もうと結果が残せなければ留年が確定してしまう。


人によっては敬遠するかもしれないが、私はこの冷たく実力主義な校風を気に入っている。

何をするも自由なところは【黎明】と同じですし。

だからこそ豹牙さんもこの学園を選んだんでしょうね。


そんなことをぼんやりと考えながら校門をくぐると、穏やかではない女子の会話が耳に入ってきた。

複数人で一人を罵倒している・・・?

いや、それよりもこの声は──。



「男にチヤホヤされてるからって調子に乗ってんじゃねーよっ!!!!」

「──何事ですか」



私の存在に気づくと、詰め寄っていた女子たちは数歩下がり、気まずそうに視線を逸らした。彼女らは確か裕次郎さんの医療班に所属している。

また、彼女らとは対照的に詰め寄られていたあやなは安堵の息をついた。