「痛っっっっ・・・・・・っった」
床でうずくまる裕次郎さんを見下ろしながら息をつく。
浬はその端で声を上げて笑っていた。
あのまま裕次郎さんにキスされると思ったら体が自然と動き、強めの頭突きをお見舞していたのだ。
しかもよりによってメガネに激突したらしい。
「鼻痛い。メガネ壊れた。弁償して」
「壊れてませんし自業自得です」
「寸止めにするつもりだったしそんなに強く頭突きしなくてもいいじゃん冴妃のアホ」
「知りませんよそんなこと。こっちは本当にキスされると思って焦ったんですから」
「まぁでもこれで嫌じゃないのがキスじゃなくて豹牙って分かったじゃん」
私たちのやり取りの裏で一通り笑った浬が、仕切り直すように話に入ってきた。
「・・・それはそうですね」
豹牙さんのときはこうはならなかった。