「お疲れ様でしたー!
あ、琥珀(こはく)先輩!

繁忙期超えたんで、少し早い忘年会とボウリング大会やるんすよ!
来ません?

琥珀先輩、ボウリング得意だって聞きましたよ」

無邪気に話しかけて来るのは、同じ学園の後輩の女の子、友映(ともえ)ちゃんだ。

……ちょっと待ってほしい。

どこからその情報を仕入れたんだ。

私は一言も、ボウリングが得意などと周囲に言いふらしてはいない。

CDショップのアルバイトも、年末に向けての新譜の予約が一段落した。

やっと目の回るような忙しさから解放されるのだ。

今日は、クリスマスイブの前日。

どうせ家に帰っても、誰もいない。

母親はクリスマスコンサートでピアニストとしてひっぱりだこ。

父親はアイドルとして世の女性の視線を独り占めしている。

最近私の後輩の友映ちゃんが入ってきたCDショップ。

音大の課題が忙しいので、来年で2年続いたアルバイト先に別れを告げるのだ。

とても名残惜しいが。