「メリークリスマス、椎菜(しいな)
今年も一緒にいてくれてありがとう」

「こちらこそよ。
大学入って最初の夏休みは、麗眞(れいま)に会いに行く。

その目標をくれてありがとう。

寂しくなるけど、時々ビデオ通話しよう。

そうしたら、離れるけど頑張れる気がする」

嬉しいことを言ってくれるのは、俺の彼女の矢榛 椎菜(やはり しいな)だ。

俺、宝月 麗眞(ほうづき れいま)は、来年からカナダへ留学する。

由緒正しい宝月の家の当主を継ぐために、身に付けなければならないことは山ほどある。

礼儀作法や立ち居振る舞いなどだ。

こう言ってはいるものの、椎菜は俺と離れたくはないだろう。

それは俺も同じだ。

俺の可愛い彼女の椎菜は、俺の決断を受け入れてくれたのだった。

優しすぎる彼女へのクリスマスプレゼントを考えていないわけではなかった。

しかし、何も思いつかないまま、この日を迎えてしまった。