✳︎
家に帰り着き、ヒールを脱ぎ捨て寝室に直行する。
絶対に1人用サイズじゃない大きなベッドに寝転がると、言い知れない寂しさと怠さに襲われた。
どこまでも黒で塗りつぶされた闇夜は、これからの私の未来を示唆しているようだ。
1人、言いようのない不安に駆られていると、スマホのバイブ音が静かな寝室に響き渡った。
誰だろう……って、今私に電話をかけてくる奴は慈恩かアオイしかいない。
少しくらい、放っておいてよ。
うんざりした気持ちで、私は鳴り続けるコール音を無視した。
…………
「……んん、」
眩しさを感じて、目を擦る。
しばらく目を閉じたまま、回らない頭でぼーっとしていると、あることに気づいてはっとした。
私、寝てしまってた……?
ドレスのまま、化粧も落とさずに。
そう思った時、今まで壊れていたやる気が急に作動した。
「……起きなきゃ」
だけど体が重い。