私は寸前で引き止めた。
「……あ? 俺、お前に用はねえんだが」
「ちゃんと謝って。私にした無礼の数々。あんたには口があるんだから、しっかり言えるはずだよね」
天馬伊吹の眉が吊り上がる。
対する私も、負けじと睨み返す。
「なんだよ、俺はお前の1人息子か何かか? お前に注意される筋合いなんてないんだけど」
天馬伊吹は私に歯向かうのを止めないようだ。
……そう。そっちがその気なら、こっちも簡単には引かないわ。
「ねえ、あんた。そうやっていつまでも好き勝手に生きていたら、いつか痛い目を見るわよ」
挑発的にそう言った。
「っは、そうかよ。でもそれはお前のただの持論だ。俺にとっては全く意味をなさない文字の羅列に過ぎない。お気遣い感謝するよ」
そう言いながら、仮面の奥で鋭く光る目は笑っていない。
去り際、天馬伊吹は言った。
「──仮面を着けてる状態で正体を暴かれたのは、お前が初めてだ」
そこにどんな意志があったかは分からない。
天馬伊吹は、そういう男なのだと脳が直接理解した。