「……。うん、話すよ。」
心臓がビクッとはねて胸がギュッとなった。
まるで、特殊能力のように私の心の中を読んで返事をするようだったから。
「あれは、大学最後の夏くらいからだったかな。なんとなく目が霞むようになってきた。」
まるで小説の最初の一言目のようだった。
「最初は目が疲れてんのかな、ぐらいにしか思わなかったんだけど。どんどん見えなくなるようになって。なんか、霧が覆ってあたりが見えないみたいなそんな感じ。」
「……えっ、」
思わず戸惑いの声を上げてしまった。
焦るように心臓が冷たく残酷に響く。
…あの、いなくなったあの年から…、ずっと……柚燈は、目が見えなかった……?
ずっと、柚燈を1番近く見ていたのに?
私は…、何で気付けなかったの……っ、
震える私に気づかないようにまた話を進めた。