「そして多分、君とアイツはすでに両想いのはずだ。……違うかな?」

 どうしてそこまで分かったのか不思議に思って目をみはると、悠さんはそれを肯定と受け取ったらしい。

「どうやら当たりみたいだな。だってあのチョコ、本命だったんだろ? アイツが昨日もらってきたチョコん中で、手作りはあれだけだったから」

「……はい」

 わたしは素直に認めた。いくらお菓子作りが得意な女子でも、わざわざ義理チョコまで手作りにしないだろう。……まぁ、そういう女子も探せばどこかにいるかもしれないけれど。

「わたし、生まれて初めて好きになった人が貢さんなんです。知り合ったのがちょうど父が倒れた頃だったんで、彼の存在はものすごく心強くて。わたしが前向きな気持ちになれたのも、父の死を心から悲しんで思いっきり泣くことができたのも彼のおかげなんです。それに、今でもすごく助けられてます」

 彼がいなければ、わたしが父の死からここまで立ち直れたかどうかも、会長の仕事と高校生活という二刀流だってうまくやり遂げられていたかどうかも分からない。

「――あの、悠さんはご存じですか? 貢さんがいつからわたしのことを好きになったのか。……もしかして、初めて会った時から……とか?」

「うん、実はそうらしい。でも、どうしてそう思ったの?」

「それは……、初対面の夜に、彼が言ってたからです。わたしのお婿さん候補に、自分も入れてもらうことは可能ですか、って。……その時は彼が『冗談です』ってごまかしてたんで、わたしも本気で言ってるのかホントに冗談なのか分からなかったんですけど」

「へぇー、アイツそんなこと言ったのか。でも兄のオレが思うに、そりゃ本気だな」

「やっぱり……。悠さんもそう思われますか?」


 前日の彼の言動から、わたしもやっとそれが本気だったんだと受け入れることができた。けれど、同時に「わたしなんかでいいんだろうか」という気持ちもあった。八歳も年下だし、まだ子供だし、彼の恋人になるならもっとふさわしい、お似合いの女性が他にいるんじゃないか。と。
 でも……、わたしが彼を好きだという気持ちも、彼も同じ気持ちだったらいいなぁと思っていたことも事実なのだ。