「でしょう? わたしも、これを読んだら返信に困っちゃって」

「あー、おもしれー! でもそっか、これで納得いった。アイツ、今朝めっちゃ落ち込んでたんだわ。なるほどなぁ、これが原因だったんだな」

「そりゃあ、せっかく手作りチョコの感想を送ったのに既読スルーされたんじゃ、落ち込んでも仕方ないですよね」

 わたしは貢に対して申し訳ない気持ちになった。せめて感想をくれたお礼だけでも返すべきだったのに。既読スルーはやっちゃいけなかったかな。

「うんまぁ、それもあるけど。多分、アイツ自身がこの一文を送信した後、めちゃめちゃ悶絶してたはずだからさぁ。『なんで俺はこんなこと書いちまったんだぁ!』って。だってこれ、絶対アイツのキャラじゃねぇもん」

「……えっ?」

「多分、昨日君のファーストキスを強引に奪ったことも後悔してると思う。君があれで機嫌を損ねちまったんじゃないか、ってな。んで、この既読スルーで君を完全に怒らせちまったって思い込んだんじゃねぇかな」

「わたしは別に怒ってなんか……。ホントに気が動転してただけなんです。でも、貢さんはどうしてそんなにネガティブな方に解釈しちゃったんでしょう? 男性ってみんな、そんなに自分に自信がないものなんですか?」

 貢が初恋だったわたしには、男性の心理を理解しようとするのはそれこそ司法試験並みに難しかった。

「いや、みんながみんなアイツみたいってわけじゃねぇよ。少なくともオレは違う。……それはともかく、アイツがあんななのはちょっと恋愛恐怖症だからかもなぁ。過去の失恋とか、他にも色々引きずってああなってるだけだから」

 さすがはご兄弟だけあって、悠さんは貢のそのあたりの事情についてよくご存じらしい。恋愛恐怖症になってしまうほどの失恋(とその他諸々)って一体……? わたしはものすごく気になった。

「あの……、それってどんなことがあったんですか? お兄さまはご存じなんですよね?」

「それはオレに訊くより、アイツが話したくなった時に聞かせてもらった方がいいと思うよ。……でもさ、オレが思うに、アイツは絢乃ちゃんに嫌われるのが怖いだけだと思うんだよなぁ。絢乃ちゃんも気づいてるんだろ? アイツが君のことをどう思ってるのか」

 わたしはコクン、と頷いた。里歩がずっと前に言っていたとおりだったのだ。わたしが勝手に「そんなわけないじゃない」と否定していただけで。