スキニーデニムにパーカー姿の里歩は、脚が太めなことを気にしているらしい。でも、スポーツのセンスがまるでないわたしは彼女の筋肉質な脚がカッコいいと思う。

「だいたいさぁ、ボウリングにロングスカートで来るってどうよ」

「それは別にいいじゃない」

 里歩の指摘に、わたしは口を尖らせた。


 ――二ゲームほど遊んだら、体力に自信のある里歩はともかくわたしはもうすっかりヘトヘトになってしまった。

「…………疲れたね。もう終わろっか」

「うん。里歩、ありがとね」

 わたしから「もう終わろう」と言う前に、里歩の方から言ってくれた。

「――ところでさ、どうして桐島さんが昨日のタイミングでキスしたか、なんだけど」

「うん……。彼、ああいうことしそうな人じゃないと思ってたのになぁ」

 休憩しに入った駅ビルのカフェで、アイスラテを飲みながらわたしは頬杖をついてそうこぼした。店内は暖房が効いていたので、冷たい飲み物でちょうどよかった。

「あたしが思うに、それって彼がアンタの気持ちを知ったからなんじゃないかな?」

「あー……。そういえば昨日、そんなこと言ってたような気が……。パニクってて頭に入ってこなかったけど」

 彼は気づいていたのだ。わたしからのチョコが本命=わたしが自分を好きなんだということに。

「だってさ、こないだCM出演のオファー断った時にアンタ言ったんでしょ? 『ファーストキスは絶対、好きな人としたい』って。彼もそれ憶えてたんだよ」

 わたしと同じものを、ガムシロップ少なめで飲む彼女はわたしと同い年なのに少しだけ大人に見えた。

「…………うん、確かに言ったけど。あれじゃあんまりにも急展開すぎるよ。理解が追いつかないってば」

「でも、キスだけで済んだと思えばさ。桐島さんはまだ紳士的な方だと思うよ。ヘタすりゃ押し倒されてたかもしれないんだから」

「おし……、えっ!?」

 あまりにも生々しい言葉が出てきて、わたしはギョッとなった。

「っていうかさ、アンタもしあのCMの話受けてたら、小坂リョウジにお持ち帰りされてたかもよ?」

「お持ち帰り? ……っていうかなんで急に小坂さんの名前が出てくるの?」

「アンタ知らなかったの? これこれ。今ネットで騒がれてるんだよ」

 里歩は自分のスマホでニュースサイトを開き、テーブルの上に置いた。わたしが覗き込んだその画面に表示されていたのは――。

「『小坂リョウジ、共演女性モデルと熱愛発覚! CM撮影現場から自宅お持ち帰り!』!?」

「そ。もしオファー断ってなかったら、アンタがこうなってたかも、ってこと」

「ええー……」