――わたしとお母さまの共同作業で作ったハンバーグが食卓に並んだのは、夕方六時半だった。
 フライパンで表面をこんがり焼いてからグリルでじっくり火を通すのが桐島家流で、そうすることで肉汁たっぷりのジューシーな仕上がりになるのだ。わたしも一つ勉強になった。


「――じゃあ、全員揃ったところで」

「「「「「いただきます!」」」」」

 五人全員がダイニングテーブルに着いたところで、賑やかで楽しい夕食が始まった。

「うんめぇ~~! これ、マジでプロ級だって! 店に出しても問題ないレベル!」

 調理師免許を持っていて、多分この家ではいちばん味覚が鋭いであろう悠さんがハンバーグの出来を絶賛した。

「このソース、マジうまいって。お袋腕上げた?」

「それ、わたしが作ったんです。お口に合ったみたいでよかった」

「えっ、そうなん!? 絢乃ちゃん天才じゃね!? なあ貢?」

「うん。――本当に美味しいです、絢乃さん」

「ありがと」

 桐島家のみなさんが美味しい美味しいとゴハンを食べながら談笑している光景に交じっていると、わたしもこの家の家族になりたいと本気で思えた。たとえ貢が篠沢家に婿入りしたとしても、この家と親戚関係になることに変わりはないのだ。

「やっぱり、みんなでワイワイおしゃべりしながら食べるゴハンは美味しいですね。今日は来てよかった」

 みなさんの笑顔を見られるだけで、わたしもお箸が進むのだった。


「――じゃあ俺、そろそろ絢乃さんを送っていくから。行きましょうか、絢乃さん」

 夜七時半を過ぎ、朝から降っていた雨が小降りになってきた頃、貢がリビングのソファーから立ち上がった。食事の後は、部屋で先に休むと言った悠さん以外はご家族がリビングで思い思いに過ごしていたのだ。もちろんわたしも。

「うん。――今日は本当に楽しかったです。お邪魔しました」

「こちらこそ、今日は来て下さってありがとうございました。貢のこと、頼みますよ」

「またいつでも遊びに来て下さいね。一緒にまたお料理しましょ?」

「はい、ありがとうございます。悠さんにもよろしくお伝え下さい。じゃあ、失礼します」

 わたしは桐島家のご両親にキチッと挨拶をして、貢と二人でお家を後にした。