見慣れた景色がよそよそしい。
「ねぇ、ただの噂なんだよね? 大神さまなんていないよね?」

瑠美も怯えたような声を出す。
沙友理は肩をすくめて「噂は噂だよ。だけど人身事故は本当にあったみたい」と、答える。

「ちょっと、やめてよここでそういう話をするのは」
四葉が顔をしかめて沙友理へ視線を向けたそのときだった。

確かにそこにいたはずの沙友理と瑠美の姿がなくなっていて、「えっ」と小さく声を漏らした。
「沙友理? 瑠美?」

声をかけても返事は聞こえてこない。
フミキリの周囲には背の高い雑草が伸びているから、その中に隠れてしまったのかもしれない。

屈んでしまえば、姿はすっかり見えなくなるはずだ。
「ちょっとふたりとも、そういう悪ふざけはやめてよね」

声を上げて周辺へ視線を走らせる。