音が消えた。
周囲からフミキリも雑草も消えて、見慣れた校舎が現れる。

沙友理は今中学校の校舎内に立っていた。
「え……どうして？」

混乱して自分の姿を見下ろしてみると、ついさきほどまでと同じ土がついたよごれた制服を着たままだった。
混乱しながら廊下を歩いていると、掲示板を見つけた。

張り出されているプリントを確認すると、２０１×年と記載されている。
「２０１×年？　今は２０２×年のはずだけど」

そう呟いて周囲を見回してみると、同じ校舎だけとなにかが違うことに気がついた。
たとえば廊下の中央にひかれている黄色い線が新しい。

壁にあったはずの汚れが消えている。
些細な変化に気がついたとき、１人の女子生徒が沙友理の隣を通り過ぎていった。

沙友理が着ている制服によく似ているけれど、これも少し違う。
紺色のスカートに臙脂色のラインが入っていたけれど、沙友理が今着ている制服のすかートにはラインが入っていなかった。