だけど沙友理はなにも気が付かずに、ジッと遮断器が上がるのを待っていた。
こんなことってあるだろうか?

そう考えた途端にスッと血の気が引いた。
四葉が経験したという話が頭の中で勝手に繰り返される。

「気がつけば誰もいなくて。大神様に声をかけられて、逃げても逃げても同じ場所に戻ってきて……」
そして朝、指がなくなっていた。

「イヤアァ!」
こわい話を思い出したのと、後ろからトントンと肩を叩かれたのはほぼ同時だった。

沙友理は悲鳴を上げてその場にうずくまる。
両手で頭を抱えてキツク目を閉じた。

目を開ければきっと全部が元に戻っている。
隣には四葉と瑠美がいて、遮断器だって上がっている。

そうに決まってる!
強い意思を持って目を開けたそのときだった。

目の前に灰色の両目があった。
「ヒィィ!!」