「ヒッ!」
瑠美が悲鳴を上げて両手で口を覆った。

沙友理も青ざめた顔で四葉の左手を見ている。
「朝起きたら指がなくなってたの。大神様にとられたんだよ」

つい声が大きくなってしまいそうだったから、できるだけ声を落として言った。
大神様に持っていかれた以外には考えられないことだった。

朝起きて指がなくなって、だけど血は出ていなかったのだからありえないことだった。
「四葉の話を信じるよ」

包帯を巻き直したとき、沙友理が深呼吸をして言った。
「ありがとう」

「それで、今朝はどうしたの? あのフミキリを渡ってきたの?」
学校までの通学路の途中にあのフミキリはある。

当然行きも帰りもでくわす場所だ。
「ううん。少し遠回りをして別のフミキリを渡ってきたよ」

そっちは大通りで人や車の行き来も多い。
四葉も安心して通ることができた。

「だけど、このままじゃ四葉の指が……」
瑠美はそこまで言って言葉を切った。