大禍中学校2年A組の教室内に踏切の音がよく聞こえてきた。
6月上旬の暖かな気候で窓が開かれていたこともあり、カンカンという機械音は教室中を満たす。

「そういえばさ、こんな噂もあるんだよ」
踏切の音を聞いた金山沙友理がふと思い出したように友人ふたりへ視線を向ける。

宮野四葉と下坂瑠美はゴクリと唾を飲み込んで沙友理の次の言葉を待った。
3人は昼休憩の時間を使って学校に伝わる七不思議や、この街に伝わる都市伝説の話をしていたため、場は十分に温まり、寒気まで感じてきたところだった。

「『大神様のふきみきり』っていう都市伝説があるんだけど知ってる?」
沙友理に聞かれて四葉と瑠美は同時に左右に首を振った。

フミキリについての都市伝説は色々あるけれど、大神まさのふみきりという話は聞いたことがなかった。
だけどタイトルだけで怖そうで、四葉は自分の両手で自分の身体を抱きしめた。

ツインテールの髪の毛が左右に揺れる。
「今ちょうどフミキリの音が聞こえてきているけど、あのフミキリで人身事故が起きたんだよ。被害者は女性で、その女性は今でもまだフミキリにいる」

「それ、いつの事故?」