通信を切り、私はキャプテンシートに背中を預けた。

…艦は今、北米の国連軍打ち上げ基地へと向かっている。

帝重工評価試験基地を襲撃したのは、三機のドラグーン。

この事からも、敵は月面に本社を置くAM開発メーカー、コンロット・エンタープライゼス社なのは明白だった。

動機は、先の国連軍次期主力機トライアルの選考に選ばれなかった事に対する不満、そして不信。

「愚かな話だ…」

私は手元にある当時のトライアルの資料を見つめた。

…確かにコンロット社のドラグーンは、スペックだけ見れば非常に優秀なAMだ。

軽量で、高いジェネレーター出力を誇り、重ビーム兵器も扱えるように設計されている。

これで飛行ユニットでも装備させれば、恐らくはソルジャーMk―Ⅱをも上回る飛行速度を叩き出せるだろう。

…だからこそ選考で落ちた。

軽量でMk―Ⅱをも上回る速度。

即ち機体に相当な負荷がかかるという事だ。

高いジェネレーター出力も、この機体の剛性では吸収しきれないだろう。

兵器とはいえ、パイロットの安全性を全く考慮していない。

高いスペックを目指すあまり、それを操る者の事を全く考えていないのだ。

軍としては、そのような機体を主力機に採用する訳にはいかなかった。

コンロット社はそこがわかっていないのだ。