当然のことみたいにそう言い放つ涼太だが僕には全く分からなかった。

この僕を前にして‪”‬そういう人‪”‬なんかいないだろ。絶対。

僕に恋しない女なんてこの世に1人もいないんだから。

***

高校入学を機に1人暮らしを始めた。

学校から徒歩15分のアパート。

元住んでいた一軒家からは電車で4駅ほどの距離にある場所だ。

「学校はどうだった? 新しいお友達は出来た? 葵ちゃんかっこいいから女の子にモテモテだったんじゃない?」

「涼太もいるから大丈夫ですよ」

学校から帰ってきてすぐ、母と電話していた。

「わぁ! すごい! さすが私の子ねっ!」

専業主婦である母は、根っからのお嬢様。

息子を溺愛し、ここまで育ててきた。

「またおうち遊び行くわねっ! 何か持ってきて欲しいものはある? 困ったことがあったらすぐママに言うのよ?」

「分かりました。でも今のところないですよ」

母は心配性で過保護だ。

1人暮らしをしたい、と言った時は反対…、というより泣きつかれてしまった。

「葵ちゃぁーん! 行かないでぇー」

と叫び散らかす母の声が脳裏を過ぎる。

「あっ、お隣さんに挨拶はした? 恥ずかしいならママが一緒に行ってあげるわよっ?」