手早く葵くんが片手で自身の胸元に手を伸ばし紺色のネクタイを緩める仕草がまぶたの隙間から見える。

嘘でしょ……?

私の‪”‬はじめて‪”‬…

こんな所でこんなクズ男に奪われるの…?

「ちょっ……もっ、もう、いいでしょ…」

「まだ、1分経ってませんよ?」

「いやっ、でも…っ」

あと少し顔を近づけたら唇が当たってしまいそうな超至近距離で葵くんが余裕げに私を見下ろす。

「僕だって一応、男ですよ? 男の家に上がる、ってそれなりに……ねぇ?」

それなり……に?ねぇ?って、なに……

てか!あんたが脅して無理矢理連れ込んだんでしょうがー!!

1発殴ってやりたい衝動に駆られるがその隙に葵くんの首元からシュルシュルとネクタイが落ち、私の胸元に落ちた。

そしてそれを手に取り、今度はそのネクタイで私の両手首とベッド柵を縛った。

考える時間なんてどこにもなくて、されるがままに私は葵くんの思い通りの格好だ。

体が硬直し、心臓がバクバクと音を立てる中、甘く優しい声が落とされる。

「大丈夫です。優しくしますから」

「…っ、」

ゆっくりと葵くんの手が私の胸元に伸びる。

「あっ……ちょっ…」

ファスナーがゆっくりと下ろされていく。

かと思ったらコテン、と葵くんの頭が胸元に落下した。