「じゃあさっそく、僕の家来ません?」

「え…っ?」

無意識に苦い顔を表に出してしまう。

すると葵くんは人差し指でツンツン、と自室の
《201号室》を指し示した。

「ほら。真隣ですし」

「いや……私これから、やる事が……」

「パンダ……」

「是非。行かせて頂きます」

***

「おじゃまします…」

「どうぞ」

脅されるがまま、半ば強制的に真隣である葵くんの家に行くとまだ荷解きがされていないダンボールが何個か乱雑に床に散らばっていた。

それらを除くと今部屋には黒いベッドと勉強机だけが置かれている状態だった。

私の部屋と同じ作りをしているにも関わらず、こっちはとても質素でシンプルな部屋に思えた。

男の子の部屋なんてはじめて入ったけどみんなこんな感じなのかな…。

「先輩。ババ抜きしましょ?」

さっきからダンボールをガサゴソといじっているなと思ってたけど、どうやらトランプを探していたらしい。

そしていつの間にか発見したらしい。

両手で大事そうにトランプを持って私を見つめていた。

その姿は遊んで遊んで、と全力でしっぽを振る子犬の姿と重なってしまう。

「なんでババ抜きなんか……」