……………でも。
「…もう、なんでもいいですよ。ここまで来たのは私の意思ですから」
この人になら…って、思っちゃった。
たとえこれが犯罪であっても、イケナイことであったとしても…彼がいいならそれでいい。
親族やかつて友人だった人達から向けられる同情の目。
どこにいても縛り付けられ、過去のことを思い出させるあの檻から連れ出してくれるなら。
「貴方の思うとおりにしてください」
それだけで私は、きっと救われる。
「…ふっ、変な子。心配して損した」
◇
◆
◇
「そういえば、君の名前聞いてなかったかも。そろそろ君って言うのは飽きてきたし、お互いに自己紹介でもしない?」
「あ…そういえばそうですね。気づきませんでした」
「俺もー」
…なんかこの人、本当ににゆるいなぁ。
エントランスからエレベーターに続く道のりを、雑談しながらとぼとぼ歩く。
エレベーターに乗り込んだところで、彼の方から自己紹介を始めた。
「俺は芹 光。そっちは?」
すごい…カッコイイ上に名前までカッコイイなんて…。
一瞬うわぁーと声を上げそうになったけど、何とかこらえて同じように名乗ってみる。