……………でも。



「…もう、なんでもいいですよ。ここまで来たのは私の意思ですから」



この人になら…って、思っちゃった。



たとえこれが犯罪であっても、イケナイことであったとしても…彼がいいならそれでいい。



親族やかつて友人だった人達から向けられる同情の目。



どこにいても縛り付けられ、過去のことを思い出させるあの檻から連れ出してくれるなら。



「貴方の思うとおりにしてください」



それだけで私は、きっと救われる。



「…ふっ、変な子。心配して損した」









「そういえば、君の名前聞いてなかったかも。そろそろ君って言うのは飽きてきたし、お互いに自己紹介でもしない?」



「あ…そういえばそうですね。気づきませんでした」



「俺もー」



…なんかこの人、本当ににゆるいなぁ。



エントランスからエレベーターに続く道のりを、雑談しながらとぼとぼ歩く。



エレベーターに乗り込んだところで、彼の方から自己紹介を始めた。



「俺は芹 光(せり ひかる)。そっちは?」



すごい…カッコイイ上に名前までカッコイイなんて…。



一瞬うわぁーと声を上げそうになったけど、何とかこらえて同じように名乗ってみる。