「……ちょっ、待ってください!!早いですって!まだ走るんですか…!?」
「ん?あぁ、ごめんね。別に走らなくていいよ」
一生懸命走ってた意味…!!
返答を聞いた私は、はぁはぁと息を切らしながらガクッと項垂れる。
そんな私とは反対に、彼は涼しい顔してまた手を繋ごうと手を伸ばしてきた。
「ま、まだ繋ぐんですか…」
なんでか知らないけど、さっきからずっと繋ぎっぱなし。
普段男子慣れしてない私は、異性と手を繋ぐということさえ緊張してしまうのに、こんなイケメンさんとだなんて余計緊張しちゃうわけで。
「嫌?」
下から覗き込むように、私の目をしっかり捉えて小首を傾げるイケメンさん。
その姿はまるで、大きなゴールデンレトリバーそのもの。
「っ…嫌じゃない、ですけど…」
目をうるうるさせてそんなふうに言われたら、誰だって「嫌です」なんて言えないだろう。
もうやだこの人!!(泣泣泣泣)
心の嘆きが届くわけもなく、そこから歩いて数分後。
「着いた」
「へっ…?こ、ここ……??」
眼前にそびえ立つは、立派なタワーマンション。