これ以上は入ってくるな、って。
遠回しに、それとなく言われた気がする。
…そりゃそうだよね。
だって、今日知り合ったばっかだし、所詮は他人だし。
誰だって話したくないことの一つや二つあるもんね。
私にだっていっぱいあるよ、それくらい。
わかってる、ちゃんとわかってる………のに。
「…結羽?どーした、そんなとこに突っ立って」
心配そうな顔して優しく声をかけられるとね、さっき距離を置かれたことを思い出して寂しさを感じちゃうの。
「っな、なんでもない…っ。えっと、お手洗い借りるね…!」
っ…やだ、なんで泣きそうになってるの私。
芹くんが私のことを心配してくれてるのかもって考えたら、自然と涙腺が緩んだ。
っぅ、早くトイレ借りよう…。
それで、泣いてるのバレないようにしなきゃっ…。
急いで踵を返してリビングから出ようとすると、いきなり腕を掴まれた。
「っわ…!?」
瞬間、勢いよく後ろに倒れ込みそうになったけど、芹くんの温もりに包まれた。
「…っや、やだ!!離してよ芹くんっ…」
もう泣いてるのはバレバレだと頭ではわかっているけれど、実際に見られたくはないから拒絶したのに。