気がつけば凪さんが私に手を振っていて、そのままどこかへと行ってしまった。
「はぁー…疲れた。凪と喋ると体力使う」
凪さんが外に出ていくと、芹くんは大きなため息を吐いて腕に込める力を少し強めた。
より密着してるのが嫌でもわかって、心拍数がどんどん上がる。
うぅ…なんかもう、恥ずかしさと緊張感でどうにかなりそうだったけど、なんとか声を絞り出した。
「っ…あの人は、芹くんの友達?」
教えてくれるかわからないけど、気になっていたことだから聞いてみる。
「…まぁ、そんなとこ」
芹くんは少しだけ声のトーンを下げて頷き、私から離れて距離を置く。
背だけを向けて、顔は一切見せずに。
「ほとんど腐れ縁みたいなもんだから。あんまり友達って思ったことはない。アイツも俺のことどう思ってるか知らないしね。興味もないし」
私に話しかけているようで、独り言をこぼしているようにも見える。
でも…私、わかっちゃったよ。
「…こんな話聞いたってつまらないでしょ。結羽は好きにしてて。なんかテキトーに飲み物とかお菓子とかもってく」
「……うん」
線を、引かれた。