下駄箱という下駄箱がなく、白と黒を基調とした広々な玄関ホール。
リビングに続くまでの道のりは、まるで高級ホテルのよう。
「ふつーじゃない?」
これを普通と言える芹くんは、普段どんな生活をしているんだろう…。
「どこが普通…私のアパートの何倍あるかわからな……」
と、ここまで言ってハッとする。
「…結羽、アパート暮なんだ。もしかして一人暮らし?」
またもや「意外」なんてこぼす芹くん。
大したことじゃないし、一人暮らししてる高校生だっているだろう。
別に、普通の会話だ。
………でも。
「…うん、そう。一人暮らしだよ」
やっぱり、キツい。
どんな反応をされるかビクビクして、何も言えずにいると。
「へーえ。じゃー俺とオソロイ?気楽でいいよね、一人暮らし」
芹くんはあっけらかんと私に同調して、靴を脱ぎ始めた。
「ほら、結羽も脱いで。土足厳禁だよ」
「えっ…あ、うん」
だから私も靴を脱いで、隅っこに揃える。
「なーぎー。俺もう帰ってきたからとっとと帰ってー」
芹くんは少し大きめの声を出しながら、リビングに続いていると思われる扉をガチャって開けた。