……この顔、知らないって言ったらこの後どうなるのか……。

考えただけでも鳥肌が……。 

「……知ってます」

「そっか、ならよかった。見にきてくれるよね?」

「は?」

「ありがとう。じゃあこれ、最前列の席取っておいたから、これを受付に見せてね」

じゃあね、と言いながら教室を出ていった千秋くん。

私はいまいち状況が掴めずに、動くことができないでいた。

『まもなく、二年B組、「ロミオとジュリエット〜もしロミオの性格がクソだったら〜」が

開幕いたします。ご覧になる方は、席を詰めて、お座りください』

「何?この題名」

「もしロミオの性格がクソだったらって、誰が考えたんだろ」

あはは……同意見です。

後ろの席から聞こえてきた話声に心の中で共感して、小さくため息をつく。

「何ため息ついてるの?」

隣から聞き慣れた声が聞こえてきて、ビクッと体が跳ね上がる。

「え?あ、武田くん。……あれ?舞台に行かなくていいの?」