文化祭準備の時に代わりにペンキを取ってきてあげた女の子、松田……わんに

そう言われて、私は新しく埋まった席に向かった。

「いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございますにゃん。ご注文はおきま———」

「本当に猫だ」

……は?

目の前には、笑いを堪えている人気者モードの千秋くんだった。

「な、なんでここに……」

もうすぐ千秋くんのクラスの劇が始まると言うのに、主役は何をしているんだろう。

「朝比奈さんの交代はいつかな?」

「えっ⁉︎あ、えっと、十一時、です……にゃん」

側を通りかかった女の子は、千秋くんに声をかけられて驚いているのか、

しどろもどろになりながらそう答えてくれた。

「そっか、ありがとう。仕事の邪魔してごめんね?」

「いえっ!大丈夫です」

幸せそうにこの場を去っていった女の子を見送って、千秋くんに視線を戻す。

「お……僕のクラスの劇、十一時五分開幕なの、知ってる?」