裏表が激しい生徒会長に目をつけられてしまいました

あれから目まぐるしく日々は過ぎていき、学校はもうすっかり文化祭色に色付いている。

「水色のペンキ、誰か余ってない?」

「赤色のペンキもないんだけど……」

「あ、じゃあ、私が持ってくるね。二人は作業を進めててね!」

困ったように眉を下げる二人に、私は手を挙げて提案する。

「え、いいの?」

「朝比奈さん、さっきからずっと歩き回ってるけど大丈夫?」

「大丈夫だよ。じゃあ行ってくるね!」

心配そうにこちらを見ている二人の視線から逃げるように教室を出る。

少し離れた階段までやってくると、深いため息をついて、そのばにしゃがみ込む。

き、緊張したぁ……。

出し物を決める時も思ったけど、やっぱり私には向いてないなぁ……この仕事。

私は小さい頃から人と目を合わせて話すのが苦手だった。

最近は大丈夫になってきたけど、やっぱり慣れないものは慣れない。

「おい、何してる?体調でも悪いのか?」

しばらくの間そうしていると、頭上から最近よく聞く声が聞こえてきて、私は反射的に顔を上げる。

「え、あ、大丈夫!」

「そうか?」

声をかけてくれたのは千秋くんで、不思議そうにした顔の中に、心配が混じっているのがわかる。

……これからは人がいない所で休憩しよう。

「うん、大丈夫!絶好調だよ!」

まだ納得のいってなさそうな顔をしていた千秋くんだけど、私が笑って見せると、少し目を見開いた後そっぽを向い、そうか、と呟くのが聞こえた。

「千秋くんは何してたの?」

少し気になったけど、千秋くんが話しかけるなオーラを纏っていたから、話題を逸らす。

確か、体育館の方から来てたような……。

千秋くんのクラスの出し物、なんだったけ……?

そう思っていると、千秋くんから予想外の言葉が返ってくる。

「あぁ、俺は演劇の練習。今終わったとこ」

「演劇っ⁉︎」

「え、あ、ああ……言わなかったか……?」

「聞いてない!」

私がそう叫ぶと、千秋くんは若干引きながらもクラスの出し物について教えてくれた。

多数決の結果、千秋くんのクラスは演劇をすることに決まり、クラスに将来脚本家になりたいという女の子がいるらしく、その子が考えた脚本で劇をするらしい。