「で、でもいい刑務官には慈愛の心も必要じゃないかな!?ほら、そのお兄さんだってやさしい鳩野さんが好きかもよ!?」


「…一理ありますね」


「えっ、いけた!?」




 思わず声に出してから、片手で口をふさぐ。

 鳩野さんは私を見下ろしてこくりとうなずいた。




「この件は一旦保留にしましょう。お兄ちゃんの意見を聞いてから先生方に報告するかどうか決めます」


「そ、そう…ありがとう…」




 なんとか助かった…の?

 ううん、でも、その“お兄ちゃん”の意見によって私たちの処遇が左右されるってことだよね?

 ちょっと時間稼ぎができただけじゃない!?




「では失礼します。受刑者が1人足りないことに気づいて探しにきただけなので」


「そ、そうなんだ…」