「雷牙…びっくりした」


「“抜け出してこい”って呼んだのは景依(けい)だろ?なんだよ、俺が恋しくなったか?」




 私を抱きしめたまま、頬にふれてくる手を掴んで、私は「はなしがあるの」と雷牙をふり返る。

 いくら脱走常習犯の雷牙とは言え、刑務官の私が受刑者に脱走を求めるなんてアウトもアウトだけど…!




「あのね、私、態度変えるから。雷牙をきらいな男だと思って、これから接してみる」


「…急にどうした?」


「後輩にバレそうなの。私、雷牙に対しては気がゆるんでるって言われちゃって…」


「ふぅん…」




 雷牙は腕をゆるめると、私のあごをつまんでキスをしてきた。

 心臓がばくっと跳ね上がる。




「なっ、なにするのっ!?」




 かぁっと熱くなった顔で雷牙を見ると、オレンジ色の瞳が細まって、頬をくすぐられる。