肩をすくめて、いつもの口八丁で丸めこもうとしている雷牙に、私は看守としてびしっとなにか言うべきなのに。

 なにも言葉が出てこない…。

 雷牙の声が耳に入ってくるたびに、あのときの熱い声が頭のなかによみがえって、鼓動がはやくなった。




「一昨日は体調をくずして早退したんだってな、看守さま?もう具合はいいのか?」


「ひゃっ…!」




 雷牙は私に近づいて、ぽんと肩に手を置く。

 仮病だってことを見抜いてるにちがいない、へらりとした笑顔に、いつもならすぐ文句を言ってるところなのに…。

 口がぱくぱくと開閉するばかりで、やっぱり声が出てこなかった。




「へぇ…?」




 林郷先輩の声が聞こえた気がして、ハッと理性がもどってくる。

 いまはひとまえ、いまはひとまえ、いまはひとまえ…!




「は…はやく、工場にもどりなさい…っ」