「…あぁ。俺が嫉妬のたぐいをしたと言いたいのか?」


「えっ、いえ、その、えっと…」


「説明をしていなかったな。…俺には“愛”という感情が生まれつき欠如している」


「え?」




 きょとんと、目を丸くした。

 財前先輩は目を伏せて“説明”を続ける。




「俺が藤枝を愛すことはできない。藤枝も期待するな。…だが、その代わり極上のメリットを提供する」


「はあ…」


「衣食住に不自由はしないだろう。欲しいものもすべて与える。やりたくないことはやらせない」


「…」




 ぱちぱちと、繰り返しまばたきをする。

 財前先輩は目を開くと、めずらしく視線をそらした。




「…まぁ、すべて“正解”の模倣(もほう)だが。ひとを大切に思う、やさしい行動とやらをまねすることはできる。望みがあれば言え」




 このひと、なにを言ってるんだろう、と初めて思ったかもしれない。