総司「次は刀ですね。 近くにいい所があるんです」
刀…真剣なんて、持つことなど 勿論 元の時代では禁止されていて。
まさか、自分が持つことになるなど思いもしなかった。
沖田さんが足を止めたのは、おんぼろ な建物の店。 おそらく鍛冶屋。
総司「すみませーん」
遠慮なくその店に入っていくのを、ついていく。
店主「沖田様、お久しぶりですな」
ドタドタと、慌ただしく出てきたのはこの店の店主らしき人。
なんとなく、京の人ではなさそう。 口調的にも標準語に近い気がする。
店主「今回は、どのような刀をお探しでっしゃろか」
総司「この人に刀と脇差しをお願いしたくて。 なるべく細身の刀を」
…まあ確かに、重い刀だと振り回せないからなあ…。
チラリと私を視界に入れて、吃驚したのか目を見開いている。
店主「まあ…こりゃえらい華奢な御方ですな。 お侍さんで沖田様以上に細身の御方、初めて見ましたわ…ガハハッ」
『あはは…よろしくお願いします…』
店の中は、おんぼろの外見とは反対に、高そうな刀で溢れかえっていた。
総司「私のこの愛刀は、ここの店の掘り出し物なんですよ」
沖田さんは、刀の頭に手を添えたため、刀から少しカタリと音がした。
総司「______加州清光 …それがこの刀の名です。」
…加州清光…。 聞いたことあるかも。
沖田さんの刀に目を向ける。
深みのある艶やかな赤い鞘に、黒が生える装飾。 柄は、朱の鮫皮に黒地の西陣織が巻いてあって、高級感を漂わせる。
店主「…室町後期から活躍している刀鍛冶の名さ。 沖田様の刀は、六代目の方が打たれたもの。」
『へぇ…六代目…』
歌舞伎みたいに、代々襲名されていく…っていうわけね。
店主「六代目は変わった御方でよぉ…士農工商以外の身分に置かれた非人と刀鍛冶しとるから、非人清光なんて呼ばれてんだ」
『…非人…ってなんですか?』
そういうと、沖田さんと店主は目を見開いた。 そんなことも知らないのかと言いたげで、少し気まずい。
総司「非人とは…賎民…と言われている方々です。 差別を受けています」
『…そんな…』
……そうだ。 ここは江戸時代。 武士、農民、町民…色んな身分が交錯している。
上の身分の人は、下の身分の人を見下し、嘲笑う。 ……そんな時代なんだ。
未来での当たり前が、この時代では当たり前でないように、この時代の当たり前は、私たちの時代ではそうでない。 時の流れは、無常なのだ。
店主「非人の人らぁは、死刑になった人の後処理をしとるんじゃ。 だから、刀の切れ味についての知識が豊富」
総司「…戦国時代に比べて、今は刀の需要も下り坂ですからね。 生き残るには、より切れる刀を打たなければならない」