総司「いや〜、中々癖の強い方でしたね〜。 まあ、知ってるんですけど」
『え、知り合いだったんですか?』
総司「いやぁ…芹沢さんがお世話になってるんです」
…あ、なんとなく理解したかも。
新撰組といえば、かの有名な浅葱色でダンダラ模様の羽織。
文久3年(今年)の4月、壬生浪士組が発足したてのときに、芹沢鴨が押し借りしたお金で、 大文字屋呉服店(現在の大丸)に作らせたという。
そのように、この菱屋にも 横暴な態度で注文をしているのだろう。
総司「…さっきの桜木さん、お梅さんっていう妾さんがいるんです。 この前 芹沢さんが菱屋にツケを頼んで着物を買って…」
はぁ…と、ため息をつく沖田さん。
総司「借金の催促のために、お梅さんを八木邸に来させてたんですけど、何度もしつこいからって……芹沢さん、お梅さんのこと手籠めにしちゃったんですって」
沖田さんは、怒っていて 吐き捨てるように喋りながらも、笑顔を絶やすことなく、でも目の奥は笑っていない。
だけれど最後の方は、むしろ軽く、そして軽薄にも聞こえた。
『なるほど…でもそれって、桜木さんも知ってるんじゃないですか?』
総司「知ってるっぽいですよ。 でも、我関せずっていうか…奥さんもおられますし、自由にしてくれ〜って感じらしいです。 お互いに、干渉し合わない…みたいな」
何それ…一応 妾だけど、奥さんでもあるのに。
『あんなに親切なのに…桜木さん』
総司「確かに、そうでしたね。 半分まけたる!! って、すっごい鬼の形相で…ふふっ」
眉間に皺を寄せて、似ていない声色で桜木さんの真似をしている沖田さん。
そんな沖田さんに、クスッと笑ってしまった。