店主「………ほな、この大きさで他のも仕立てさせてもらいます。」



 採寸を終えて、カタリ と鯨尺を置きながら言った。



店主「ほんなら、仕立て終わったら、わてかウチの嫁が その…屯所?まで、持っていきます。 早くて仕立てには、一ヶ月はかかってまうと思います」



 やっぱり、今すぐなんて出来ないよね…。 薄々気づいてはいたけど。



 着物って、その人の体格に合わせてのオーダーメイドだから、そのくらいかかってもしょうがない。



 というか、この人お嫁さん居るんだ…まあ、呉服屋の旦那さんだし、所帯は持ってるか。



『…そうですよね、分かりました』



店主「なるべく(はよ)う仕立てますさかい。 …ところで、名字も伺ってよろしいやろか。」



『あ、浅葱 雪乃です』



 店主はピタリと手を止めた。



店主「浅葱て…浅葱色のでよろしくて?」



『はい、そうです』



 そう言うと、店主は紙に墨をつけた筆で、"浅葱 様"と書いた。



店主「分かりました。 浅葱 雪乃さんやね。
   わては、菱屋の桜木(さくらぎ)申します」



 桜木さん…名字かな? …というか、菱屋って…あの、芹沢鴨の愛妾のお梅が居る…?



店主「ほんなら、よろしゅう頼んます」



『あ…お願いします…!』



 ペコリと頭を下げて、沖田さんと一緒に家を出た。