「……え?」
なんで悩んでるってわかったんだろう……。
「ミーティング始まる前、いい詞が浮かばないって言ってただろ?」
「……あ」
その一言で悩んでるって察して、ここに連れて来てくれたの…?
「今、スランプ中ってことなのかな」
「はい」
話していいのかどうか迷いつつも、私はゆっくり話し始めた。
「ラブソングを書いてほしいって言われても、恋愛経験がないからいいものが浮かばなくて……。でも、琴吹さんみたいに同年代に共感してもらえるような売れ線の詞を書かないといけないのかなって思うと、なかなか納得いくものが書けなくて」
こんなことで悩むなんて恥ずかしいことかもしれない。
遠坂さん、呆れてるかな…。
“そんなくだらないことで悩んでたのか”って思われたかな。
「……それは、プロとしてデビューしたアーティストが一度は持つ悩みだよね」
……え?
予想外の言葉に驚いて思わず顔を上げると、遠坂さんが穏やかな表情で私を見ていた。