「結音ちゃん、新曲の作詞もよろしくね」

帰り際、篠崎さんに声をかけられて、今一番やらなければいけない仕事を思い出す。

正直にスランプ中だとは言い出せなくて、

「頑張ります」

苦笑しながら答えた。

それから、次のミーティングまでひたすら作詞を続けた。

いくつか候補はあるけれど、“これ!”と思える言葉が浮かばない。

自分で納得できるものが浮かばずに、書いては消し、書いては消しの繰り返し。

結局、詞が完成しないまま次のミーティングの日を迎えてしまった。

少し早めに会議室に着いた私は、鞄に入れていたノートを取り出して詞を考えていた。

リリースは冬だから、切ない恋の詞がいいかな。

なんてひとりで色々考えていたら、

「何してるの?」

不意に声をかけられた。

ビックリして顔を上げると、遠坂さんが部屋に入ってきていた。

「新曲の詞を考えてるんですけど……」

「ああ、年明けにリリース予定の曲?」

「はい。でも、なかなかいいものが浮かばなくて」