私の幼馴染はいつも優しかった...
「あっ、マキちゃん!」
「あ?」
「夏祭りあるんだって、一緒に行かない?」
不機嫌そうな坂村薪飛《サカムラマキト》、通称マキちゃんは私の幼馴染。
年少さんの時からずっと一緒にいるマキちゃんが私は大好きなんだ//
小学3年生からで、今は高2だから...
9年間片想い中なの。
まだ1回も告白したことなくって。
そろそろしたいな~なんて感じ!
「シノ!おいシノ!!」
「えっ、な、なに?」
「なにってお前...自分から誘ったんだろ?」
呆れているような顔のマキちゃん。
すっかり自分の世界にはいってた...
マキちゃんは予定を確認してくれてたみたいなのに。
申し訳ない...
そう思っていると不意につつかれる。
「行ける」
一言。
でもその一言が私にとっては凄く嬉しかった。
「楽しみにしてるね!」
「5時に神社集合な」
「うん!!」
私は自分の席に帰っていってしまうマキちゃんを見つめた。
今日もまた、いつもと同じ授業が始まる。
けど、前にいるマキちゃんを見てたら、色々と楽しくなってきた。
浴衣着てこうかな~?
なに持ってこう?
食べるのはわたあめ、りんご飴、イカ焼き...
あっ、マキちゃん射的得意そう。
なんて考えてて、その日の授業はおろか、友達の話しさえ、頭に入ってこなかった。
放課後、私はマキちゃんのもとへ駆け寄る。
「マキちゃん!一緒に帰ろ?」
「ああ、」
私達はいつも一緒に帰る。
その事をみんな認識してるから茶化したりとかはしてこない。
そういうところが一緒にいて楽だし、みんなの大好きなとこだ。
(私が気づいていないだけで、本当はマキちゃんがみんなを睨み付けてたんだけどね...)
「シノ」
「ん~?」
「...夏祭り、浴衣着てく?」
「うん、着てくよ?」
「そうか」
少しだけ、本当に少しだけ顔が緩んだマキちゃん。
マキちゃんも、着てくるのかな?
写真とか、撮れたりするかな?
楽しみだな~!
なんて、この頃は呑気にそんなことを考えてた。
「おかーさーん!!」
「紫乃羽?一体どうしたの?そんなに騒いで」
あっという間に時は過ぎて今日は夏祭り当日!なんだけど...
バッグが決まらない!!
もう4時だよ~!
どうしよう💦
「バッグが決まらない~...!」
「白い巾着で良いじゃないの」
「そうする!!」
そうと決まればお財布と、鏡と、櫛と...
よし!OK!!
次は浴衣で...
「お母さん、浴衣出して!」
「はいはい」
お母さんが出してくれたのは薄ピンクに紫の蝶の浴衣。
綺麗...
って、見惚れてる場合じゃなかった!
えっと...これをこうして...
「あら、良いじゃないの」
「ホント!?」
「ええ。ほら、こっち来て。髪も結ってあげる」
「ありがとうっ!」
私は、いつもおろしているロングの髪を、高いポニーテールにしてもらった。
「はいっ!良いわよ」
「うわあぁ~!」
鏡を見てビックリする。
ポニーテールがふわっふわっ!
銀色の蝶の簪もつけてある。
凄い...
「ありがとうお母さん!!」
後はメイクをして...
厚くない、よね?
リップも一応巾着に入れて...
完成だっ!
て、もうこんな時間!?
時間を見てみると、なんと4時45分になっていた。
わああ~!!
ヤバイヤバイ、かなりヤバイよ~!!